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本当はワーホリなんて行きたくなかった話


最近毎日カナダ行きに向けて準備をしているけれど、ふと思い返してみれば大学を卒業する前の私はワーホリには行きたくないと思っていた。


なぜなら当時もうすでにずっと自分がやりたいことは映画の仕事であり、他のことなんて何一つやりたくなかったから。


留学から帰国したばかりで、現地の映画やシアター専攻の生徒たちに圧倒され、自分の実力不足を実感していた。もっと専門的なことを学ばなければ、一秒でも早く作品を作らなくてはと焦っていた。だからそれ以外のことをするなんて時間の無駄のように思えた。


まず、物語にしか興味のない自分が毎朝決まった時間に起きて会社に行くことなんてできないと思っていた。昔からアルバイトさえ長続きしたことがなかったのに。


もうひとつ大きな理由は「就活」という必要以上にイベント化されたものへの拒否反応だった。

大学在学中、学内の就活説明会にスーツを着て髪の毛を黒染めしないと参加できない、というルールがあった。そして、その瞬間に全てを諦めた。そんな誰が決めたのかも分からない、意味不明なルールに従うことは絶対にしたくない。それだったら自分でタウンページでも見て仕事を探そうと決めた。


物心ついた頃から親や周りの人たちが仕事を探す方法といえば、地域の情報誌に載っている求人欄やコンビニに置いてある求人誌だった。だから就活が具体的になんなのかもよくわかっていなかった。


今ならパートではなく正社員とか、募集している仕事の待遇が違うことはよく分かるのだけど、後々困ることになったとしても、当時それを受け入れることはできなかった。だってあまりにもふざけてるとしか思えなかったから。


けっきょく私は在学中も留学中も一切就活をしなかった。いつか働くのはわかっていたけれど、確実に今ではないと思っていた。まだまだ勉強していたい気持ちが強かった。当時はまだあてがあり、大学を卒業したらすぐに何が何でも学生としてアメリカに戻ろうとしていた。演劇やライティングを大学、大学院で勉強して卒業し、卒業後に学んだことを元に仕事を見つける計画だった。


だからワーホリをするのは考えたこともなかった。ワーホリはどちらかというと「社会人」の人が会社を辞めて海外の語学学校に行ったり、働いたりして一年楽しんで帰国するもの、という印象が強かった。私はもうまず自分が「社会人」になれないことは重々わかっていたので、そんなことはなおさら無理だと思っていた。なので、自分の食べていけそうなことが仕事になるまでなんとか持つように、と準備をしていた。


まぁこれも、ひどい詐欺に遭う前の話。


その後、今の状況に陥って派遣社員として9ヶ月働くことになるわけだけど、最近になってあの時自分はなぜあんなに「自分は会社員として働くことができない」と強く思い込んでいたのか、考える。だって、私は実際9ヶ月も働くことができたのだから。


実際、仕事なんてこの世に山ほどある。そして、「黒髪で来なさい」なんていう会社ばかりとは限らない。今の派遣先の会社も、ある程度の身だしなみコードみたいなのはあるけれど、髪を黒くしろとか、ヒールの靴を履けとか、そういうものとは無縁だ。


なのに長年この国に住んでいるうちに自然と正社員になるにはスーツを着て、ヒールのパンプスを履き、髪は黒くしないといけない、と学校や色んな場所から発信されるメッセージを信じて、会社勤めは自分には無理だ、と思い込まされていたのだ。


もしあのとき差別的な「黒髪指定」がなければ。仕事を探すこと、会社で働くことがもっと気軽なものだというメッセージがあれば、留学の資金を貯めるために数年会社で勤めることを受け入れ、今頃学生としてアメリカに戻れていたかもしれない。アメリカよりハードルが低いカナダなら、なおさら可能だっただろう。


あの時私が「就活」に対して示した拒否反応は間違っていなかったと思うけれど、それが私が仕事を失う理由であってはなかったのではないか。


今はロマコメジャンルを愛するクリエイターを目指す者として、会社員、派遣社員としての経験は大事だと思ってる。

生活のために仕事をしながら夢を諦めないヒロインが登場するメグ・キャボットの作品を読んでいると尚更そう思わせられるし、なんなら体験取材をしてお金をもらえるなんていいじゃん、くらいに自分の中だけで割り切れるときも正直ある。

でも、やっぱりあの時もっといい方法があったのではないかと、こうやって時々少し考える。


過ぎてしまったことなので、今できることを少しづつやっていくしかないのだけれど。今はもうすぐ出発であることが救い。

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