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my man is married

実家に帰ってきて、冷蔵庫みたいにひんやり冷えた部屋の引き出しの一番上に『恋人たちの予感』のDVDを見つけた。それからひたすら同じ映画を再生してる。そうしてたらふと、サリー(主人公)がセントラルパークのレストランで友達と話してた会話の内容が心に残った。

彼氏と別れたばかりのサリーが「恋愛にもタイミングがある。今は誰とも付き合いたくない」と言うと、友達が「どこかにあんたにぴったりな彼がいて、早くつかまえないと他の誰かがつかまえてしまう。あんた、自分の夫が他の女と結婚してると思いながら暮らすことになるよ」みたいなことを言うシーンがある。このシーンを観て「ふーん、なるほど。そんなふうに感じるときってあるのかなぁ。想像つかないな〜」なんて思ってた。

そしたら今日、私の、いつかもしかしたら結婚するかもしれないな、なんて心のどこかで思ってた人が結婚したという話を聞いた。長く会ってなかったし、いきなりこんな話して「は???」って感じだと思うけど、私にも無意識にそういう人がいたみたい。正直私も今まで忘れてた。自分に結婚願望があるということ自体考えたことがなかったのに、思ったより動揺してて自分でびっくり。 っていうか早くない?同い年だけど?!?早くない?!?なんで?!?!

いや、分かってる。この感じ、絶対に学生結婚なんだよね。職業的にこのあいだまで学生で、今年から働きはじめるわけだし。お相手は絶対、同じようなキャリアで、同じように苦楽を乗り越え、友達みたいにずっと一緒に今まで勉強してきたんだろうな…とか想像するし、仕事で成功して若い子を搾取するとかじゃなくて、働く前にもう友達とさっさと結婚するって…と彼の株まで上がってしまった。絶対いい家族構成員になるって想像つくもん。

同時に色々と考えてしまう。たとえばもし私の家が裕福だったら。私は今「選択」したような選択をしただろうか。私にもしもっと選択肢があれば、彼が行ったような入学の難易度が高い大学に行き、隣で同じ夢を追う人生があったかもしれない。

というのも、私は「キューティー・ブロンド」の影響もあって(笑わないでくれよな!)本当にそういう安定感のある(?)職業に就くことを考えたことがあった。ハーバードで法学を勉強することとか。(なんかものすごい壮大な夢を語ってるみたいだけど、この劣悪な環境からニューヨークのけっこう名門な学校に留学したことを考えると、環境さえ整えば全然できたと思う)(っていうか留学も、子供のころ経験してればここまで固執してなかったかもしれないし。)

それがなぜか今「アーティスト」とか「芸術」とか一番お金にならなくて苦しいことばっか目指してやってるわけ。 彼は昔からほんとに間違いのない道を行く人だなと思っていたけど、学生時代の友達と結婚って(推測だけど!でも絶対そう!)もう正解すぎてぐうの音もでない。アーティストを目指さないのも正しいし、でも彼の職業って人の役に、貧しい人の役にも立てるし、あまりに正しすぎる。もし、私がどれだけアーティストとして成功して何億円稼いだとしてもかなわない正しさ。ものを作ることなんて、なければ生きていけないものでもないし、誰からも求められてないもん別に。

でも私がなんでまだそういうことをやろうとしてるかって、やっぱり根底に自分が貧困家庭で嫌な思いをして、そういう時にそういう娯楽に救われたから、というのがある。自分のアーティストになりたい問題も、突き詰めていくと貧困問題なのか…と気付いたりして。

正直、たまに中流か裕福な家庭に生まれて(もちろん家族仲とかも良好)、そういうのがどうでもいいまま生きていたかったなと思ったりするよね。自分がそういう境遇にでも生まれないかぎり、特に貧困問題とかどうでもよくなるもん絶対。みんながそうじゃないとは思いたいけど。ただ私がここまでしつこいのは自分が当事者だからの一点に尽きる。やめたいもう。裕福な家庭に生まれて堅実に仕事をして学生時代からの親友兼恋人と楽しく暮らしてぇ〜〜〜

とか、でも普段正直忘れてるんだよね。ハーバードで法学を勉強とか、もうとっくに自分のやりたいことではなくなってるから。いつどこで何が違ったのか、考え出すと止まらなくなるけど、これもひとつの運命なんだと思う。この星の下生まれてきたさだめ。

それにさっき、留学も子供のころ経験してればここまで固執してなかったかもしれないと書いたけど、逆に言えば、そういうマイナスな部分が今日の私を作っているとも言えて。

もちろん、アーティストを目指すことでしか得られないこともたくさんある。たとえそれが小さなことでも、私は今それを愛しているし、それ以外の人生は生きていたくない。

もう私は彼と違う人生を生きてるんだなと改めて思う。私は送れなかった、送らなかった自分の人生にときどきこうやって思いを馳せながら、それは他の誰かに任せて、いま目の前にある人生を私なりに輝かせたいと思う。

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